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愛情バッテリーは過充電!『BatteryNote』72studioさんが送る人外キャラクターへの熱視線

  • 執筆者の写真: 悠樹 黒澤
    悠樹 黒澤
  • 10月10日
  • 読了時間: 20分
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可愛くて、奇妙で、ちょっぴり衝動的。そんな愛情をお持ちの方にぴったりのゲームがroom6からリリースされました。『BatteryNote』は、ゴミ捨て場から拾ってきたロボットたちと対話し、過去を知り、ときには過充電でお仕置きもできるハートフルでバイオレンスなSFアドベンチャーノベルゲームです。開発者の72studioさんは、人間ではないキャラクター=人外キャラにとびきりのラブを注ぐクリエイター。そんな72studioさんに、愛憎の内幕をお聞きしました。



――自己紹介をお願いします。


72studioさん:

72studioといいます。普段の活動としては基本的に1人でゲームを作っていて、人外キャラクターばかり出てくるゲームを中心に作っています。



――本業はゲーム関連のお仕事をされているのでしょうか。


72studioさん:

ではないんです。ただweb系のエンジニアをやっていて、プログラミングは本業でも少しやっています。ゲーム制作で愛用しているUnityやC#とは違ったツールや言語を使って開発しています。でも、ゲームとは全然関係ない会社にいます。最近はマネジメント業務のようなこともしていますね。



――ゲーム開発は独学ということですか。


72studioさん:

独学ですね。『RPGツクール』を学生時代にやっていて、それがゲーム開発の原始体験みたいな感じです。『RPGツクールGB』や『RPGツクール2000』などを触っていました。Unityは2、3年前くらいのごく最近触り始めて、独学でやってきています。



――なるほど。ではさっそく作品についてお聞かせください。2025年10月10日に発売された新作『BatteryNote』がどのようなゲームか簡単にご紹介をお願いします。


72studioさん:

『BatteryNote』は、ゴミ捨て場から拾ってきたロボットたちを充電して会話を楽しむゲームです。途中で明らかになるロボットたちが過去にやらかしたことを過充電でお仕置きしたりしつつ、主人公自身も失った記憶を取り戻していくマルチエンド型のSFアドベンチャーノベルゲームです。


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――『BatteryNote』の開発が始まったきっかけを教えていただけますか。


72studioさん:

遡ること1年前ぐらいですね。2024年1月ぐらいに、『DRINKRIME』という開発中のタイトルで東京ゲームダンジョン5というイベントに出展したんです。その会場が、東京の浜松町にある新しめのビルだったんですね。そこでイベントからの帰りしなに、セキュリティーロボットがビルの中を巡回しているのを見かけたんです。それがあまりにも先進的な見た目をしていて、人型に近いような、可愛くてかっこいいビジュアルですごくいいなと思ったんです。


そのときにひらめいて、こういうロボットたちを相手に語りかけたりお仕置きしたりする対話型のゲームを作ったら面白いんじゃないかなと思ったんです。帰宅してすぐにPowerPointで企画書を作って、SNSで「こういうコンセプトのゲームどうかな」って投稿したんですね。そうしたらそれがちょっとバズって、「もしかしていけるんじゃないか」「需要があるんじゃないか」と思ったんです。そのときは『DRINKRIME』を作っていたので息抜きというか「このコンセプトだったら1週間か1か月ぐらいでさくっと作れるんじゃないかな」と思って開発を始めたのがきっかけでした。結果として今すでに1年ぐらいかかってるんですけど(笑)たまたま見かけたロボットにときめいてしまって、思いつきで作ったというのが始まりですね。




――ひらめきがあって今に至るわけですね。ロボットを見かけて可愛いと思うのは分かるのですが、「お仕置き」の発想に至ったのはなぜでしょうか。


72studioさん:

なんでですかね(笑)自分でもあんまり意識していなかったのですが、SNSに投稿したとき「ロボットの記憶を引きずり出す」というコンセプトもいいんじゃないかと思ったんです。人間だと拷問みたいな重い感じになってしまうのですが、ロボットだったらカジュアルにちょっと痛めつけることによって新しい記憶やリアクションを引き出せて面白いんじゃないかと思ったんです。それを「こんなのどうですか、面白くないですか」と言ったらちょっとバズったので、みんな痛めつけたいんだなって思って(笑)それで思い立って勢いづいたって感じです。よく勘違いされるんですが、僕自身はすごく破壊衝動が強いわけではないんです。「かわいそう」だけではなく友情などのテーマも普通に書きたいと思ってるんですよ。



――ロボットにイジワルするゲームでは、相手の反応も重要かと思います。作中のロボットのリアクションを描く上で特に力を入れた部分があれば教えていただけますか。


72studioさん:

僕が開発する作品では常に、とにかくゲームの中の人外キャラクターたちとやりとりをしていることをよりリアルに感じられる手応えを感じさせたいなと思っています。だから、グラフィックや演出の面で「やってやったぞ」と感じられるようにしたいなと意識していますね。具体的には、ロボットを過充電して爆発させた時のリアクションをより派手にするためにアニメーションを追加したり、表情を描き込んだりしています。特に生きている感じを出すためにはキャラクターのリアルなアニメーションがすごく重要だと思っていて、周りにアニメーションを専門としている先輩たちがいるので、教えを乞いながら修行したりしているぐらい力を入れています。


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――実際に『BatteryNote』をイベントで出展されて、ユーザーのリアクションはいかがですか。


72studioさん:

「痛めつけることに対するためらいを感じる方が多いな」というのが見ていて意外だったんですよね。みんな積極的にいじめたい衝動があるのかなと思っていたんですけど、絶対いじめられないという人もいました。だからゲームの主旨を途中で方向転換して、「ロボットたちはアノマリーという危険な存在だから、お仕置きしてもいいんだよ」という大義名分を追加したんです。それでもとにかくいじめたくない人もいるっていう反響が面白くて。「じゃあどちらの人も楽しめるようにしようかな」という舵取りに変更しました。



――より間口を広げて軌道修正したわけですね。間口の広さでいうと、『BatteryNote』の遊びやすさも印象に残りました。ユーザーインターフェースで気を遣っている部分はありますか。


72studioさん:

僕がゲームを作る指針として「普段からゲームを触らない人でも絶対に迷わない」というのを心掛けています。もともと僕はゲームがすごく下手なので、あまり難しいUIのゲームはできないんですよね。なので基準は僕自身です。デジタルに慣れていない人でもなるべく迷わないようにしたいな、と思っていますね。なるべく十字キーと決定キーだけですべてが終わるデザインになっています。次に何をするかが画面を見れば分かるように意識していて、あまり複雑なアクションは求めないようにしているんです。何か選択肢があって選ぶか、次にメッセージを送るかぐらいのバリエーションしかないくらいシンプルにしています。



――レトロゲームハード風のグラフィックもシンプルさに付随するものですか。


72studioさん:

もともとレトロゲームハードが好きなんです。低解像度で色数も制限されているアートワークは僕が昔プレイしていたゲームのスタイルに近いので、好みという部分もありますね。


それ以外にも、なるべくコスパよく画面作り・絵づくりができるようにしたいと考えているというのもあります。僕は絵づくりがそんなに得意ではないので、なるべく統一感を出したり、画をそれっぽくするために制限を設けた方がいいだろうと考えているんです。例えば4色で表現すると、自然と画面のトーンが統一されるメリットもありつつ、作画するときのコストもかなり減るので、非常に負担が軽くなるんです。解像度の高い絵を描くと描き込みを無制限にできてしまうので、あえて制限を設けることによって低コストに作画できるというのが一番大きな理由ではあります。好みとコストパフォーマンスのバランスがとれるのが今のスタイルですね。



――レトロハードへの愛着はもちろん、コストパフォーマンスとしてもメリットがあると。1人で開発している事情ならではですね。


72studioさん:

ただ計算違いだったなと思うのは、意外と低解像度ですべてを表現するのは難しいということです。複雑な構図を描くとき、「この低解像度でどうやって表現するんだ?」と思うことがあって、たまに難しい場面に出くわします。そういう時は高解像度な絵を描いた方が早いのにな、と本末転倒になっていることがあります(笑)



――せっかくなので登場するロボットについてご紹介いただきたいのですが、もし72studioさんが同居するならどのロボットがいいですか。


72studioさん:

事前に質問を頂いたとき、非常に難しい問題だなと思いましたね(笑)うんうん悩みながら考えました。僕はキャラクターが普段どのように生きているかを想像しながらプロフィールを作っているので、日常の様子を想定しながら回答していきますね。


まず、一緒に暮らしているシーンを想像してみました。僕自身はプライベートを大事にする人間で、ゲームを1人で淡々と作っているときは何も話しかけないでほしいし、すこし疲れた時はトイレにこもって漫画を読んでいたりします。とにかく1人の時間をものすごく大事にする人間で、人と話すことにもけっこう体力を使ってしまうんです。だから、あまりうるさくないキャラクターがいいなと思って、そうすると「デバインドR7」というキャラクターと一緒に過ごしているシーンが一番しっくりきました。


デバインドR7は、戦場で戦い抜いてきた誇り高いロボットです。普段は物静かで、僕とスタンスが似ていて、自分の時間を大事にしそうなキャラクターだと思います。戦いのことばかり考えて生きてきたので、平和な日常生活においては逆に静かで、やることもなくベランダでぼーっとたそがれていそうだなと思います。それならお互い干渉し合わなくていいかな、と想像しました。


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――ほかのロボットを選ばなかった理由も教えていただけますか。


72studioさん:

まず「サーベリー」という監視ロボットがいるんですが、サーベリーはめちゃくちゃうるさくて絡みがしつこいキャラクターなんです。作中でも「ダンナ~」とか言いながら主人公にダル絡みをしてくるロボットですね。最初のうちは人懐こくて可愛いやつだと思うかもしれないのですが、段々そのノリに疲れてきそうな未来が見えたので、会いたいときに会うくらいがいいなと思います。


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72studioさん:

最後に「ジェシカ」というウェイターロボットがいるのですが、性格としてはにぎやかで、いちばん子供っぽいキャラクターなんです。ジェシカがもともと働いていたお店でも、いろんなイタズラをしたり、お客さんにもちょっかいをかけたりしていました。そんなジェシカを家に置いておいたら、とんでもないイタズラをはたらいたり、借家の壁とか家具を破壊されるのではないかとつねにヒヤヒヤしそうなので、お店で働いているのを遠巻きに見ているくらいがいいかなと思います。


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――ここで、72studioさんのファンが気になっているもう1作の開発中新作、『DRINKRIME』についてもお聞かせください。ずばり開発状況はいかがですか。


72studioさん:

『DRINKRIME』は体験版をリリースしている状況で、チャプター1の終わりまでプレイできます。残りのシナリオは頭の中で熟成されていて、ほぼ終わりまでプロットができています。現在の開発状況としては『BatteryNote』を優先してきたので、そちらが無事リリースを迎えたあと『DRINKRIME』のシナリオ執筆から再開する予定です。システムとしては『DRINKRIME』も『BatteryNote』も似たような仕組みを使っていて、自作のゲームのライブラリを作って両方とも同じエンジンで開発しているんです。『BatteryNote』でパワーアップしたシステムを『DRINKRIME』に輸入する構想もあるので、こうご期待です。


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人外バディを語らせて


――72studioさんといえば2024年のIDC(※1)「もっと癖(ヘキ)なゲームを作りませんか?」での登壇が印象に残っている方も多いと思います。同イベントで語られていた「人外バディもの」というジャンルについて、簡単な説明と魅力を教えていただけるでしょうか。


72studioさん:

「人外バディもの」に当てはまるのはいろいろな作品があると思います。僕が好んで摂取していた代表的な作品を挙げると、『メダロット』(※2)というアニメがすごく好きで、小学生くらいのときに観ていました。あと『うしおととら』(※3)という漫画もあったりしますね。


それらの作品の共通点を挙げると、主人公は人間の少年だけど、そこに人間とは異なる生態をもつバディ=人外バディが現れて、最初はお互いの価値観が認め合えなくてギクシャクするんだけど、徐々にいろいろなイベントを通じてお互いを認め合い、友情を育んでいくというドラマがある。それこそが人外バディものだと思っています。


たとえば『メダロット』だとメタビーというカブトムシ型のロボットが主人公のパートナーになるのですが、中身はいわば宇宙人みたいなもので、メダルという魂の入れ物が原動力になって動いている機械なんです。メタビーは、人間味はあるものの、価値観が人間とはすこしズレていて、ケンカっぱやい性格というのもあり、たびたび主人公と衝突するんですね。でもバトルで協力し合い、さまざまな出来事を通じて思い出を共有し、ときには仲違いしながらも元に戻ることを繰り返すうちに、次第にお互いを認め合っていきます。一緒に暮らして友情以上の何かを育んでいく、そういうものが人外バディの魅力であって僕が好きだと思う部分です。


(※1)IDC

Indie Developers Conference。年に一度開催されるオリジナルゲーム開発者向けのカンファレンスで、インディーゲーム業界内外からさまざまな専門家が登壇する。


(※2)『メダロット』

ゲームボーイ用ソフト『メダロット』シリーズを原作としたテレビアニメ。第1期は1999年から2000年にかけて放送された。小学生の天領イッキが、相棒のロボット=「メダロット」であるメタビーとともに破天荒な日常を繰り広げるストーリー。


(※3)『うしおととら』

藤田和日郎氏による漫画作品。週刊少年サンデーで1990年から1996年にかけて連載された。主人公の少年・蒼月潮が妖怪のとらとともに、大妖怪と戦う姿を描く。



――なるほど。人外バディものへの思いは、72studioさんのゲームにも影響を与えていますか。


72studioさん:

はい、もちろん与えていると思います。例えば『DRINKRIME』であれば主人公は人間的な存在で、「ジン」という悪魔の世界からやってきた喋る酒瓶と同居生活を強いられます。ジンは異世界からやってきた存在で、人間とはまったく異なる哲学を持っているので、犯罪者を取り締まるときも人命を軽視したりと、常識とはかけ離れた価値観で会話してくるんです。そうした価値観のギャップから生まれた軋轢(あつれき)が、数々の出来事を共に乗り越える中で少しずつアップデートされていって、「こういう価値観もあるんだな」とお互い認めあっていくというシナリオになっていく予定なので、かなり人外バディものを意識して作っていますね。『BatteryNote』も『DRINKRIME』ほどではありませんが、人外バディものの構図は意識しています。


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――究極的な質問になるのですが、72studioさんが考える人外の定義とは何でしょうか。


72studioさん:

先ほど人外バディのお話でも触れましたが、1つの要素としては「人間とは異なる生態をもっている」ということが文脈としてあると思っています。全然違う文化や哲学をもっているというのが自分にとってはロマンであり、萌えポイントですね。もう1つはやっぱり見た目かなと思っていて(笑)僕は人外キャラクターに関しては面食いなので、より人外っぽい、人間からかけ離れた見た目の方が好きだなと思います。生育環境や文化が人間とは異なれば、外見もまた自然と人間とは異なる進化を遂げるはず。そういう意味でも僕は人間離れしている見た目が好きです。


その癖(ヘキ)、どこから来たの?


――ご趣味を教えてください。ただし、「残りHP100のときに打ち込む趣味」「残りHP50のときに楽しむ趣味」「残りHP1のときにする趣味」に分けて教えてください。


72studioさん:

まずHP100のときに打ち込む趣味は、アウトプットする創作の趣味全般ですね。今はもうゲーム制作以外のことをしていないので、体力100%のときにする趣味のすべてはゲーム制作が担っています。ゲーム制作っていろいろなことを内包していて、プログラミング・作曲・作画と色々な作業が入っているので、それらのプロセス1つ1つが独立した趣味みたいなものといえるかもしれません。ゲーム制作を始める前は同人誌を作ったり、作曲してCDを作って売ったり、バンド活動したりという感じで過ごしていたのですが、それがかたちを変えて……というか合体してゲーム制作になった感じです。


体力50%のときの趣味は音楽で、とくに楽器を演奏することでしょうか。昔、コロナ禍になる前は積極的にバンド活動をしていました。ジャムセッションという、知らない人とその場のノリで一緒に演奏するのも好きだったのですが、今はそこまで労力をかけられないので、自宅で音楽配信サービスであつめた楽曲に合わせて即興でピアノを演奏することを楽しんでいます。以前は人に見せる・人と楽しむという目的でやっていた趣味なのですが、いまは自分の頭を空っぽにしてリセットするためにやっていて、HPを50から上に回復させたいときに役立っています。手癖でグチャグチャ弾いているだけなんですが、それがすごくリフレッシュになるんです。



――どちらもクリエイティブなご趣味ですね。HP1のときはいかがですか。


72studioさん:

残りHP1のときは演奏するだけの体力も残っていないので、スマホのアプリで漫画を読んでいます。病気のときでも、ベッドの中で漫画を読んでいることもあって、これはいつでもできる趣味ですね。常にいろいろな作品を並行して読んでいて、一見セリフなど情報量が多くて疲れそうなものなのですが、実は僕はあまり漫画の文字をしっかり読んでいないので、疲れないんですよね。セリフも含めて全体を絵として捉えているような気がします。あとは、漫画だとページ送りは自分の好きなタイミングでできるので、マイペースに読み進められるのもいいなと思います。


ただ、先ほど言ったように全体を絵として捉えて、セリフを中途半端にインプットしていることが多いので、競技ものが題材の漫画を読破してもルールや戦略が一切分からないまま終わっていることがあって。『ヒカルの碁』(※4)とかすごく好きなんですけど、人間ドラマだけが頭に残っていて囲碁のルールは一切分からないまま終わっています(笑)でも読後感としては、すごく楽しかったなって満足しているんですよ。キャラクターたちが織りなす人間模様だけを抽出して楽しんでいる感じですかね。読むのが速すぎて、知人に「読んでないだろ」って言われたこともあります(笑)。


(※4)『ヒカルの碁』

原作をほったゆみ氏、漫画を小畑健氏が担当して描かれた少年漫画。1999年から2003年まで連載された。平凡な小学生が天才囲碁棋士の霊に憑りつかれたことで、囲碁の世界に巻き込まれる物語。



――それでは、72studioさんに影響を与えたなと思う作品を5つ教えていただけるでしょうか。


72studioさん:

まず1つ目として、ゲームの『MOTHER2 ギーグの逆襲』(※5)が自分のゲーム体験の根っこにあります。『MOTHER』シリーズは第1作から第3作まであるのですが、特に2が好きなんです。『MOTHER2 ギーグの逆襲』が出た当時、僕は小学1〜2年生くらいでした。そのころは『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』など王道のRPGがいろいろと出ていたのですが、そのなかでも異質だと感じたんです。ゲームの中に世界が、文化があって人が息づいているのがすごく衝撃的でした。シナリオを書いたのはコピーライターの糸井重里さんなのですが、全体的に面白いんですよね。台詞がヘンテコだしユーモアがあって、町もちゃんと生活感がある、現実にありそうな街並みになっているんです。人の生活を感じられて、世界に没入する感じがインパクトがあって、これが僕のゲーム観に影響を与えたと思っています。


(※5)『MOTHER2 ギーグの逆襲』

任天堂より1994年に発売されたスーパーファミコン用RPG。コピーライターの糸井重里氏がゲームデザインとシナリオを手がけている。ポーキーやどせいさんといった個性的なキャラクターが登場した。



72studioさん:

2つ目はアニメで、先ほども言った『メダロット』という作品です。特に第1期の方ですね。この作品がやっぱり、人外バディという概念を僕に強く植え付けましたね。IDCでは『きかんしゃトーマス』がきっかけだと言ったんですが、あれは物心つく前に観ていたので、自覚をもって人外バディが好きだと思ったのは『メダロット』が初めてです。「人外バディっていいな、萌えるな」と鮮烈に感じました。


今挙げた『メダロット』を観たのは小学5~6年のときの話ですが、高校1年生くらいのときに『逆転裁判』シリーズ(※6)の第1作~第3作に出会いました。ゲーム作品ですが、シナリオやキャラクター、テキストやテンポ、音楽などを含めて全体的にめちゃくちゃ好きな作品なんです。巧舟さんという独特なテイストのテキストを書かれる方がシナリオを担当されているのですが、キャラクターがすごく個性的で生き生きしているんです。


(※6)『逆転裁判』シリーズ

カプコンが開発するアドベンチャーゲームシリーズ。プレイヤーは新米弁護士となって無実の罪を着せられた依頼人を救うべく、事件の真相を暴いていく。第1作は2001年10月にゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売された『逆転裁判』。



72studioさん:

僕はサウンドノベルが好きで、小学生のころから『かまいたちの夜』(※7)などいろいろな作品を通ってきてはいたのですが、それらの作品は「音響効果や分岐要素などのインタラクションがある小説の発展形」というイメージだったんです。でも『逆転裁判』はちょっと別物だと思っていて、この作品は違うフォーマットというか、新たな作品の形態を生み出したゲームで、すごく衝撃を受けましたね。「くらえ!」とか言いながら証拠を突きつけると悪者を懲らしめたりできて、よりインタラクティブで没入感のある世界観とシステムがすごいインパクトでした。


(※7)『かまいたちの夜』

チュンソフトより1994年に発売されたスーパーファミコン用ゲームソフト。真冬の雪山のペンションで起こる不可思議な殺人事件をめぐるサウンドノベル。


72studioさん:

4つ目としては『MINDHACK』(※8)がすごく好きで。これはIDCでも少し話したのですが、かわいくて個性的な人外キャラクターたちを懲らしめられたり、自らの手でいろいろと関わっていけるという作風がインディーゲームならではだと思っています。商業作品でこういう作風のゲームを僕は見たことがなくて、『MINDHACK』を初めてプレイしたときに「こういうのがインディーゲームでやるべき作品なんだ」って気づいたんです。だから、今作っているゲームはかなり影響を受けていますね。プレイヤー=人が画面の手前にいて、直接その手でキャラクターにインタラクトしているというスタイルはかなり参考にさせてもらっています。


(※8)『MINDHACK』

Steamにて2023年より早期アクセス配信を開始しているビジュアルノベル。他人の精神を覗ける天才マインドハッカーとして、悪人の頭をお花畑にするテキストアドベンチャーゲーム。インディーゲームレーベル「ヨカゼ」に所属。


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72studioさん:

最後の1つは『UNDERTALE』でしょうか。作者のTobyFoxさん自体も『MOTHER2 ギーグの逆襲』や『逆転裁判』に影響を受けていたりするので、僕が好きなものを分かっている人が作っている感じがします。ゲームの中に世界があって、キャラクターが生きていて、文化があってすごく没入できるんですよね。キャラクターはほぼ人外キャラクターだし、最高ですね。こういう発売当時にしては尖った作風が世の中にも受け入れられていてすごいな、と。TobyFoxさんはキャラクターメイクやシナリオだけでなく音楽も絵もすごく魅力的で、一つの「世界」を作りあげてしまうスゴイ人なのですが、僕もこんな作品を作れたらいいな、彼のようになりたいな、という思いを込めて影響を受けた作品の1つに挙げさせていただきました。



――ありがとうございます。それでは最後に、「ロボットをあんまりいじめたくないな」という人に対してあえて『BatteryNote』の魅力を伝えていただけるでしょうか。


72studioさん:

いじめなくても楽しめるように作りました! ただ、申し訳ないことにロボットをいじめないと見られないシナリオもあります。でも、ロボットたちは「アノマリー」というよくないことをしたロボットの烙印を押されています。そういう大義名分がありますから、遠慮なく過充電しちゃってください(笑)とはいえ破壊しなくてもそのロボットの人生を知ることができますし、ハッピーエンドもあるかもしれないので、きっと大丈夫。十分に楽しんでいただけます。愛でてあげてください、ロボットを。


――続きまして、「ロボットをめちゃくちゃいじめたい」と思っている人に対して『BatteryNote』の魅力をアピールお願いします。


72studioさん:

ネタバレになるのであまり詳しいことは言えないのですが、ぶっちゃけ「引導」を渡せます。体験版で見られる以上に「やっちまえる」シーンがたくさんあるので、ぜひ本編を楽しみにしていてくださいね。



――では最後に『BatteryNote』『DRINKRIME』を応援しているファンに向けて一言お願いします。


72studioさん:

まずお礼を言わせてください。ファンアートをたくさん描いていただいたり、イベントにも遊びに来てくださったり、声援をいただいたりして、非常に励みになっていますし、ゲーム制作の原動力になっています。本当に、ほんとうにありがとうございます。頑張って応えられるように作っているので、待っていてください。期待を裏切らないような「濃いめ」の人外キャラクターたちがわんさか出るゲームをどんどん出していきますので、信じてついてきてください!


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